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連載:第3回 日経ホームビルダー「掃除がラクな家のつくり方」

建築業界初となる掃除専門家による連載! 雑誌「日経ホームビルダー」(2008年12月号・日経BP社)にて、クリーンプロデューサー「植木」による建築企画【掃除がラクな家のつくり方】を連載中です。第3回目は、「室内汚れを減らす設計のコツ…その1」を紹介しています。
これからの時代、家を建てた後から掃除を考えるのではなく、掃除メンテナンスを考えた家づくりを! ハウスクリーニングなど住居における掃除問題の解決手法を、掃除現場の声と共に家を建てる側の専門家に向けて情報発信をしていきます。掲載内容は、当HPの連載企画 「掃除がラクな家の構想案」の一部を抜粋したものとなっています。

「日経ホームビルダー」は、工務店、ハウスメーカーをはじめ設計事務所、建材・設備会社などで戸建て住宅の設計、施工に携わる方々に、住宅の性能、コスト、顧客ニーズへの対応など技術や営業、経営、市場に関する最新情報やノウハウを読みやすく、わかりやすく紹介する実務情報誌です。
詳しくは: http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/HB/

何所に?どんな汚れ?「汚れの知識」 /第1編 第3章 現状分析 その2

 

● 2.3-2 汚れの知識 (どんな汚れ?)

住まいの汚れとは、家を形成している各部分、すなわち床・壁・柱・天井・間仕切り・造作などや、家具・調度品などの表面に付着し、汚染しているすべての異物を汚れと呼んでいる。掃除の対象とする汚れを識別するには、汚れの知識が必要となる。汚れを識別するには、なぜ汚れたのか(原因)、どんな汚れか(種類)、どのように付着しているか(付着状態)、いつごろ汚れたのか(経時変化)などを調べる必要がある。

★どんな汚れ? 汚れの分析手順
(1)なぜ汚れたのか原因を調べる → (2)どんな汚れか種類を調べる → (3)どのように付着しているか付着状態を調べる → (4)いつごろ汚れたのか経時変化を調べる

 

(1) なぜ汚れたのか? 原因を調べる
汚れを知るうえではじめに確認することは、なぜ汚れたのか原因を知ることである。原因が判らないために掃除方法を誤って、無駄な作業が増えたり、建材の損傷を招いたりもする。原因を調べる事で、汚れが付着するメカニズムや主成分を予想できるだけでなく、原因を理解して対策および予防をしない限り、また汚れが付着する可能性が高いということになる。

建築物に異物が付着する原因を考えると、大きく分けて”自然的原因”と”人為的原因”の二つになる。

1) 自然的原因
住まいは、使用しないでも相当の期間が経過すれば汚れが見えてくる。その原因は↓
1. 空気中に浮遊混在している粉塵・花粉・炭素粒子などが気流に運ばれて、住まいに接触し、あるいはわずかな隙間から内部に侵入して建材などに付着する
2. 雨水の中に混在している異物や、壁面などにたまった汚れが降雨とともに、住まいへ付着および壁面などを伝って流れ出し、雨水の乾燥とともに固着する
3. 動物類の活動やフンなどで汚れる(ねずみや鳥など)
4. カビや衛生害虫などの発生によって汚れる
5. 空気中に含まれる化学物質や酸性雨などにより化学反応して汚れとなる
6. その他

 
 

2) 人為的原因
住まいには、人間の使用につれて様々な異物が付着する。このような汚れの汚染率は、自然的な原因よりもはるかに高い。その原因は↓
1. 歩行による靴裏の泥やホコリ
2. 手垢・分泌物・排泄物・抜け毛など
3. 飲食物や調理に伴う油煙、タバコの煙および灰など
4. 物品の移動に伴う細片
5. 衣服などの磨耗粉や繊維くず
6. その他

 
 

(2) どんな汚れか? 種類を調べる
汚れの種類は無数あるが、大きく分類すると水溶性物質(水になじむ汚れ)、油溶性物質(水をはじく汚れ)、その他汚染物質などがあり、汚れの種類によって使用する洗剤もそれぞれ異なる。しかし、現実には複数の汚染物質が混在して汚れを形成しているので、汚染原因や周囲の状況、臭いや感触、水になじむ又は水をはじくか?などによって主な汚れを判別する。

1) 汚れの基本調査
1. 汚染原因や周囲の状況から付着している汚れを分析する
2. 水になじむ又は水をはじく汚れなのかを分析する
3. 臭いや感触などによって汚れを分析する
 

 
* 汚れは、複数の汚染物質が混在し形成しているので、調査していくとその数はとても多くなる。一般的にハウスダストといわれている塵・ほこり等の成分は、外から室内に侵入してくる土ぼこりや花粉など以外は、ほとんどが室内で生じた各種の磨耗粉である。その大部分は衣類や紙から生じた繊維などの粉であるため、この種のほこりを俗に”綿ぼこり”という。その他に、人のフケやアカ・食品の屑・ペットの毛・カビ類・ダニ類・etcなども含まれる。さらに空気中に混在している有害物質などを加えるとその数はもっと多くなる。したがって、掃除の対象となる汚れの種類を調べる時は、その主成分を判別するための基本的な調査をすると良い。

 

 

(3) どのように付着しているのか?付着状態を調べる
汚れの付着状態によっては、同じ汚れであっても除去方法が異なる。また、汚れの種類や建材の種類によっても、汚れの付着状態に違いがでてくる。建材表面に載っているだけの汚れもあれば、建材に吸水性があるため表面だけでなく内部まで浸透している汚れもある。
汚れの除去を考える場合は、汚れ物質の種類とその性質を知るだけでなく、さらに汚れの付着状態と、そこに働いているメカニズムを知る必要がある。汚れの付着状態は、汚れ物質の性質によって異なるだけでなく、付着されている建材などの性質によっても違ってくる他、付着後の時間的経過によっても変化する。このように汚れの付着状態は様々で、簡単なものから複雑なものまであり、付着に働いている力も様々である。その中でも代表的な付着状態を次に記す ↓

 
 その他、錆(サビ)などにおかされる、つやが無くなる、傷がつく、焦げる、はがれる、変色または退色するなども汚れとされ、その付着状態といえる。

(4) いつごろ汚れたか?経時変化を調べる
汚れによっては、空気に触れて酸化したり、液体の物が固まったり、時間とともに汚れが変化する。例えば・・・鉄が酸化して錆(サビ:酸化鉄)たり、コーヒーや緑茶などに含まれるタンニン酸のしみは、時間の経過に伴って除去しにくくなる。したがって、長時間汚れを放置させない事が大切であるとともに、汚れが付着してからの経過時間により、除去作業の方法も変わるという事になる。

1) 汚れと経時変化の実例

① 長期間にわたり使用し続けたエアコンのフィルターに、ホコリなどの汚れが積み重なり、フィルター本来の機能は失われている。このホコリは通常のホコリに比べ、室内空気に含まれる湿気や油脂成分を含み、長期間にわたり吸い込まれる圧力と時間の経過に伴って、簡単な除去力では除去しにくいものとなっている。除去を行う場合は、ブラシ類など物理的な力を使い掃除機と併用して作業すると良い。

② 長期間にわたる喫煙により、全体的に茶色く汚れたエアコンの表面カバー。周りの壁紙に比べて汚れが目立つのは、エアコンのカバーに使われている素材がプラスチック系(親油性を持っている)であるため、油脂性の汚れが付着しやすいだけでなく静電気も帯びやすいためと考えている。

③ ガスレンジに付着した汚れ。調理の際に噴きこぼれた液体が焦げてしまい、時間の経過に伴って固着して、除去しにくいものとなっている。噴きこぼれてすぐの液体のうちに拭き取れば、ラクに除去する事ができる。

④ 壁紙のカビ被害。カビが発生してから時間がたつにつれて増殖し、汚染範囲が広くなっていく。さらに、長期間カビを放置しておくと、壁紙が変色をおこしたり、損傷したりするだけでなく、衛生的にも良くないので注意が必要である。

次回は、「掃除方法の決定」と題して、掃除作業の方法を決める際に必要とされる知識について紹介したいと思う。

何所に?どんな素材?「建材の知識」 /第1編 第3章 現状分析 その1

■ 2.3 何所に?「建材の知識」・どんな汚れ?「汚れの知識」

掃除をするためには、「何所に?どんな汚れ?」が付着しているか分析 → 分析結果を基に掃除方法の決定する必要がある。
掃除の対象となる場所と汚れについて分析する。住まいの汚れは建築材料(建材)に付着しているため、何所に(建材の知識)汚れが付着しているか、どんな汚れ(汚れの知識)が付着しているかを識別する。そして、分析結果をもとに掃除方法を決定していくことになる。

 

● 2.3-1 建材の知識(何所に?)

住まいの汚れは、床や壁や家具などの建材に付着している。汚れの除去を行うには、汚れが付着している素材の種類や化学的性質および物理的性質など、掃除に必要な建材の知識が求められる。基本事項としては、「建材の種類と使用部位」、「耐水性・耐洗剤性」、「表面形状や硬度」、「吸水性・吸湿性」などについて調べる。
★何所に? 建材の分析手順
(1)「建材の種類と使用部位」を調べる → (2)「耐水性・耐洗剤性」など化学的性質を調べる → (3)「表面形状や硬度」、「吸水性・吸湿性」など物理的性質を調べる

 
(1)「建材の種類と使用部位」を調べる
近年、建材の種類も多様化・複雑化しており、一見しただけでは判断を誤る建材も少なくない。したがって、材質を知る前提として、建材の種類と使用されている部位について確認しておくことが求められる。

   

使用部位の確認については、同じ建材に同じ汚れが付着しても、床や壁や天井など建材の使用されている場所によって、洗剤や用具や作業方法などが異なる。したがって、建材の部位についても確認する必要がある。
★例えば・・・建材の種類によっては、使用できない洗剤や用具などがあるため、汚れが付着している建材の種類を確認することは重要なこととなる。その他、汚れ除去に、床面で液体の洗剤を使用する場合はとくに問題なくても、壁面や天井で使う場合、洗剤が下へたれてしまうため泡状の洗剤を使用したり、他の部分が汚れないように養生をするなど、各建材の使用部位によって作業方法に変化が生じる。さらに、壁面上部や天井などは高所の作業となるため、高所作業のための用具の準備や安全について配慮するなど、除去作業を行う際に、汚れがどこに付着しているのか建材の使用部位についても確認する事は大切である。

(2)「耐水性・耐洗剤性」を調べる・・・化学的性質
汚れが付着している材質を知るうえでも重要なポイントは、建材の耐水性・耐洗剤性といった化学的性質である。汚れ除去を行う際に、水や洗剤の使用は不可欠であり、もっとも身近で知っておくべき知識といえる。基本的に水になじむ(親水性)建材なのか、それとも水をはじく(親油性)建材なのかは確認する必要がある。その他の化学的性質として、静電気を帯びやすい建材なのかなども、掃除をするうえで知っておきたい性質である。この化学的性質が明確になると次のような事が解る。

 

建材の中には使用してはいけない洗剤もあり、建材と洗剤の相性など耐洗剤性を知らないと、建材を溶かしたり変色するなどの損傷を招いたりもするので、建材の耐洗剤性について調べる事も重要である。
★例えば・・・コンクリートやモルタルなどに強酸性の洗剤を使用すると、液が付着した部分の素材は化学反応により溶けてしまう。また、プラスチック系の建材に、シンナーなどの溶剤を使用すると、溶剤が付着した部分の素材は、時間の経過と共に化学反応により表面が溶けてしまうことがある。

(3)「表面形状や硬度」、「吸水性・吸湿性」・・・物理的性質
汚れを除去するうえで、建材の物理的性質は作業方法に影響を及ぼし、同じ洗剤を用いても建材を傷めたり、汚れを拡散したりする事になる。建材表面に凹凸が多いものは作業しにくく、柔らかく弱い建材は傷がつきやすい。また、吸水性のある建材に水分を含んだ汚れが、内部に浸透して除去が困難になるなど、建材の物理的性質によって掃除の方法は大きく変わる。

1) 表面形状や硬度を調べる
建材の表面が平滑・密であれば、汚れは付着しにくく、付着しても除去しやすいが、建材表面に凹凸や隙間が多ければ、汚れは付着しやすいし、付着した汚れを除去するにも困難を伴う。

 

建材を近づいてよく見たり、顕微鏡で見てみるとその表面は様々な形状をしており、単に表面の”粗さ”という観念だけではかたづけられず、”凹凸の頻度”とともに”凹凸の形状”も問題となる。なお、凹凸の程度が同じであっても、その突起やくぼみの形が鋭く、複雑な物ほど汚れがつきやすく、しかも付着した汚れは除去しにくい。

基本的な建材表面の”粗さ”を分類したものを次に記す。
 

さらに、表面の形状だけでなく、建材の硬度について調べる事も掃除方法を決定するうえで重要な事である。建材自体が軟らかいのと、硬いのとでは作業方法にも違いが出てくる。

2) 吸水性・吸湿性を調べる・・・物理的性質
建材に吸水性や吸湿性があると、水分と一緒に汚れが内部に浸透しやすく、除去が困難なものとなる。そのため、水や洗剤などの使用には十分な注意が必要とされる。また、建材が多孔質のものや海綿状のものは、素材そのものとしては吸水性でなくとも、毛管現象*1により水に溶けた汚れを吸い込みやすい*2。
*1 毛管現象とは、細い管状物体の内側の液体が管の中を上昇(場合によっては下降)する現象である。
*2 多孔質のものや海綿状の建材は、毛管作用によって水分を捕らえることの出来る隙間(孔隙:こうげき)をもっており、毛管孔隙の多少によって、水分を捕まえる能力の大小がわかる。調湿効果のある建材などは、このような性質を利用して湿度をコントロールしているものが主流となる。

★ 壁面に使用される建材の一種の珪藻土などは、表面を顕微鏡で見てみると目には見えないほどの小さな凹凸が多くある、多孔質であるため吸湿性がある。調湿効果のある建材には、多孔質や海綿状など、建材表面に小さな凹凸が多くあるものが主流となる。

次回は、何所に?「建材の知識」・どんな汚れ?「汚れの知識」  –その2 として、「汚れの知識」 を紹介する。