汚れの分析と対策ポイント – その1 /第二編 1-2
● 1-2 汚れの分析と対策ポイント
1-2.1 ほこりなど空気の汚れ
“ほこり”は住まいの汚れの中でも大きな割合を占めており、ほこりを除去すれば日常的な掃除の半分終わったといっても良いほどである。そして、汚染範囲が広いというだけでなく、現代の密閉化された室内環境においては、衛生上好ましくない汚れのため、日常的に除去しなければならない最も重要な汚れといえる。吸入性アレルゲンを含むハウスダストも、汚れの分類上”ほこり”として考える。
【1】汚れの原因と成分
室内におけるほこりの発生原因としては、外から室内に侵入してくる外部侵入と室内で生じる内部発生がある。
(1)外からの侵入
外から室内に侵入してくる汚れとして土ぼこり、炭素粒子、金属粉、各種磨耗粉、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、カビの胞子、花粉、その他などがあり、侵入経路としては、気流に運ばれて開口部から入る・人や物に付着して入る・泥として靴などに付着して入り乾燥破砕により浮遊塵となるなどの経路で室内に侵入してくる。
*冬になると “ほこり”が増える!
冬になると外気の湿度が下がり乾燥する。このことで水分を有していた汚れも乾燥破砕などにより発塵して浮遊塵となるため、冬になるとほこりが増えるのである(季節に関係なく室内も湿度が低く乾燥すれば同じ現象が起こる)。
(2)室内での発生
室内で生じるほこりの多くは各種の磨耗粉となる。その大部分は衣類や紙から生じた繊維などの粉であるため、この種のほこりを俗に”綿ぼこり”という。その他にフケ・アカ・カビ類・ダニ類・タバコの煙・ペットの毛なども加わり、これらをまとめてハウスダストとも呼ばれている。
★資料1. ハウスクリーニング現場における、室内の空気を循環使用するエアコン。本体カバー外面は、たばこによるヤニ汚れやほこり等が混ざり、かなり汚れている。内部フィルターにもほこりがビッシリ。
★資料2. 本体カバーを外して洗浄。さらに、内部も洗浄。
★資料3. 内部洗浄後の汚水。真っ黒な汚水は、エアコン内部の汚れであり、室内空気の汚染度が色で表わされているようでもある。空気の汚れの色?そんな気もする。
【2】汚れの性質
ほこりは、風や衝撃によって空気中に飛散しやすいが、若干の間空気中に浮遊したあとは、徐々に沈降して建材や家具などの上に付着する。ほこりが空気中に分散浮遊している場合を”浮遊塵”と呼び、床や器物に堆積している場合を”堆積塵”という。汚染範囲が広く凹凸や隙間などにも入り込み付着するので掃除が大変となる。さらに、汚染されたほこりを人が吸入することは健康上問題がある。*汚れの質量が軽いほど空気中に長く浮遊する。
【3】健康阻害要因
一般にほこりの目に見える限界は10μm程度とされており、これ以下の場合肉眼で見る事ができず、空気中に浮遊する時間も長く、多くはスモッグの粒子のように半永久的に空気中を浮遊する。人間がほこりを吸入すると、粒子の大きな物(15~100μm程度のもの)は鼻やのどの粘膜に捕らえられるが、中程度の粒子(1.0~15μm程度のもの)は上気道に付着し、ごく微細なもの(1.0μm以下のもの)は深く肺胞まで侵入して沈着する。
◇ ほこり粒子の大きさ (*数値はだいたいの目安・・・単位:ミクロン=μ)
花粉10~100μm・細菌1.0~11μm・掃除機の排気0.2~10μm・浮遊塵0.1~12μm・油煙0.04~1.0μm・ウイルス0.02~0.05μm・タバコの煙0.01~0.1μm
汚染されたほこりを吸入すると、呼吸器を害したり、各種アレルギーの原因となる。また病気の細菌感染を媒介する事にもなるので、健康を考えた掃除をするうえでも除去しなければならない重要な汚れとなる。
【4】ほこりなど空気の汚れの対策ポイント
分析結果をもとに、汚れの予防対策を行う。ほこりなど空気の汚れに対してどのような予防対策を行うべきか、そのポイントをつぎに挙げる。
◎ 室内への侵入を防ぐ
◎ 室内の汚れにくい設計と建材選び
◎ 室内のほこり(浮遊塵)を速やかに室外へ除去する
★現場画像1.住宅用天井埋め込み式エアコンのフィルター汚れ。左は清掃済み、右は清掃前
★現場画像2.浴室用天井埋め込み式換気扇。
★現場画像3.高所天井扇及び照明器具
★現場エピソード
あこがれのマイホーム。建築家による個性的なデザインが自慢で、新築時は大変喜んでいたのだが、数年後、リビングのシンボルである吹き抜けの高窓や天井扇や照明器具などの汚れが目立つようになったので、掃除をしようとしたが高すぎて出来ないことに気付き、掃除業者に依頼をしてくる居住者もいる。
上の現場画像は、当社に吹き抜けの天井扇と照明の掃除依頼をしてきた居住者宅の写真。日の光もよく入り、天井扇の汚れ具合からも空気が循環しているのが予想できる。しかし、設置されている天井部まではかなり高く、高所作業となるため通常の作業よりも時間と費用が多くかかる。居住者も新築の段階では気付かないことであったが、長期にわたる維持管理を考えると、掃除メンテナンスを考えた設計はランニングコストの面でも大切なことといえる。
次回は、 「汚れの分析と対策ポイント – その2」 について紹介する。