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汚れの分析と対策ポイント – その2 /第二編 1-2 

 
 

● 1-2 汚れの分析と対策ポイント
 
 

1-2.2 微生物や衛生害虫の発生による汚れ

住まいの汚れの中には、「生物の活動などにより付着する汚れ」がある。これらの汚れは生きているため発育条件がそろうと増殖する。生物が原因となる汚れとして、カビやコケなど微生物の発生や、シロアリによる建材の損傷やゴキブリの糞など衛生害虫の活動に伴う汚れ、ねずみや鳥など動物の活動に伴う汚れなどがある。微生物・衛生害虫・動物の活動などにより付着する汚れは、美観を損なうだけでなく病原菌を媒介したり、吸入性アレルギーの原因ともなるため衛生上好ましくない。そして住まいに発生してしまうと、除去および駆除が大変で、人と家に害をもたらす汚れとなる。

 

【1】微生物の汚れ(カビ)
住まいに発生する代表的な微生物として”カビ”があり、「掃除がラクな家」では主にカビを微生物の汚れとする。カビは湿度が高く温かい場所に発生する。住まいにおいては水廻り(バスルーム・洗面所・キッチン・トイレなど)や北側にある窓サッシの周りなどにカビの発生が多い。住まいに発生するカビは専門的に”真菌”(*1)といい、クラドスポリゥム・アスペルギルス・アルテルナリアなどに代表されるように菌糸を持つものが多く、目に見える状態になってから気づく事がほとんどである。カビはあらゆる所に発生し、壁・塗装面・床面などにとどまらず、人体にもカビは発生するので、環境衛生上からも好ましくない。また、カビはダニのエサでもあり発育環境も似ているのでカビと共にダニも発生しやすいことや、建材の損傷にも結びつき大きな被害を与えるなど、人体への危険度や汚染範囲の広さを考えると、予防対策するべき重要な汚れとなる。

 

 

*1真菌
カビ菌のことを真菌と呼ぶ。真菌の種類はとても多く、中には真菌症(*2)として人間に感染するものもあるほか、吸引性アレルギーの原因物質とされている。カビの胞子は”ほこり”と似た性質を持ち、風や歩行などの衝撃により空気中に飛散して浮遊塵となり移動する。そして建材などに付着し、発育条件が整うと発生および増殖していくため汚染範囲も広い。

*2真菌症
真菌症とはカビなどによって引き起こされる感染症である。真菌症にはカビが皮膚から進入して病変を起こす表在性真菌症と、呼吸や経口で体内に侵入して障害を及ぼす深在性真菌症がある。表在性真菌症で代表的なのは白癬(水虫)やカンジダなどである。深在性真菌症は臨床的にカンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症が重要で、近年の剖検例ではカンジダ症に代わり、アスペルギルス症が最も多くなっていると言われている。

 

(1) カビの性質
カビは、菌糸と呼ばれる根の部分と、胞子と呼ばれる葉のような部分の2つに分かれていいる。単体の胞子は目に見えないほど小さく、風や衝撃によって空気中に飛散しやすい性質を持っており、発育条件がそろえばどこにでも発生する。
カビは植物に近いという概念があったが、最近ではDNAの比較分析により、進化の系統上、菌類は植物よりもむしろ動物に近いことが明らかとなった。
・・・文部科学省「カビ対策専門家会合」より

(2) カビの発育条件
カビは、栄養、酸素、温度、湿度、この4条件がそろうと発育する。
1) 栄養:カビの栄養源は、ホコリや人のアカがあれば十分といえるほど、多くの物を栄養とする。
2) 酸素:酸素も重要な条件だが、人にとっても取り除くことはできない。
3) 温度:5℃~35℃で生育する。なかでも25℃~38℃位が活発に繁殖するカビの種類が多い。温度は10℃以下がカビの生育を抑えるが、人には寒いと感じる温度である。
4) 湿度:通常のカビは湿度が70~90%位を好むが、好乾性のカビだと65%以下でも発育する種もある。人が快適に感じる湿度は40%~65%なので、年間を通じて室内の湿度を40%~50%に保ことが最良のようである。

(3) 対策ポイント
◎ 掃除をこまめにする(こまめに掃除をして栄養となるものを除去する)
◎ 湿度をコントロールする (室内の湿度を年間通じて40%~50%を保つ)
◎ 結露を防ぐ(建築物の設計・施工方法などにより躯体内部や室内の結露を防ぐ)
◎ 防カビ剤(発生および寄せ付けないための対策)
★カビ菌は空気中いたる所に混在しているので室内への侵入を防ぐことは不可能に近いことです

 

 

【2】 衛生害虫の汚れ(ダニとゴキブリ)
住まいの室内環境において、人間の健康にかかわり合いを生じる恐れのある生物としては、前述のカビのほか、ねずみ・ゴキブリ・ダニ・蚊・ハエ・その他の害虫などがあり、個々の生態や性質はそれぞれ違うが、基本的な対策は共通する事が多く、ここでは主にそれらをまとめて”衛生害虫”と呼び、ねずみもゴキブリなどの害虫も衛生上および物質上の害を与える。ゴキブリやハエなどは汚物や食品に集まり、汚物や病原体を運搬する危険な働きをするほか、ダニや害虫の屍骸が乾燥破砕して空気中に飛散し、吸引性アレルギーの原因物質ともなり、衛生上好ましくない。また、シロアリのように建材を侵食するなどの被害をもたらすものもいる。その他、直接的な害ではないが、不潔感・悪臭・視覚的不快感をもたらすのも衛生害虫の特徴である。害虫の被害が多い時期は5月~10月で気温や湿度が高いなど発育条件のよい時期に多い。(詳しくは、東京と福祉保険局のホームページへ 東京都におけるねずみ、衛生害虫の調査結果)

   

「掃除がラクな家」では、衛生害虫の中でも主にダニとゴキブリについて対策していく。室内におけるダニやゴキブリの発生原因としてはつぎに挙げることが考えられる。
① 外からの侵入:外から室内に侵入してくる
② 室内での発生:何らかの理由により個体や卵が侵入し、繁殖する

(1)ダニ
ダニは世界で6万種いると言われており、そのうち日本では約1700種類もいるといわれている。住まい(家屋内)から検出されるダニは100 ~150 種類だが、これは家屋内に生息しているダニ類と家屋外から侵入してくるダニ類の合計となる。このうち特に問題になるのは、家屋内に生息するヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ (チリダニ科)、ミナミツメダニ (ツメダニ科)となる。ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニは吸引性アレルギーの原因物質 (アレルゲン) になり、家屋内から検出されるダニ類の70%以上をこのダニ類が占める。このダニ類は、生虫、死虫、糞のいずれもがアレルゲンになり、家屋内で検出されるダニの中では最も注意を要する種類と言える。その他ミナミツメダニは8~9月に異常発生する事が多く、人を刺し、吸血はしないが人の体液を吸う。 ミナミツメダニは捕食性で、他のダニ類やチャタテムシやカビなども摂食する。
1)ダニの生態と発育(繁殖)条件
* ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニ・ミナミツメダニの繁殖条件

① 温度条件
気温20~30℃でよく繁殖する (特に25~28℃) 。冷蔵庫内 (4℃) でも湿度があれば2週間ほどは生息できるともいわれているが、高温(50℃以上)には弱い。

② 湿度条件
コナヒョウヒダニは相対湿度60%以上、ヤケヒョウヒダニとミナミツメダニは70%以上の相対湿度を必要とする。50%以下ではいずれも繁殖することができない。55%ではヤケヒョヒダニとミナミツメダニが1ヵ月以内に死滅し、コナヒョウヒダニは死滅するまで数カ月かかる。ただし、部屋全体の湿度というよりも、ダニ虫体周辺の湿度が問題となるので注意する。 
予防としては、室内の湿度を年間平均50%以下に保つことが重要となる。

③ 餌(エサ)
ヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニは塵の成分であるフケ、アカ、食品の屑等に含まれる不飽和脂肪酸を含有するものを食べる。ミナミツメダニは捕食性で、ダニ類(共食いもする)やチャタテムシ(家屋内に激増した昆虫で、食品害虫 体長1mm)、カビも好み摂食する。 
予防としては、エサとなる汚れ物質を速やかに除去する事であり、こまめな掃除が必要とされる。

④ 産卵場所
家屋内のダニは背光性(暗いところを好むこと)で、虫体が小さいので畳表にある隙間でも潜ることができる。これらの習性や特性を生かして、畳、カーペット、寝具、衣類、ぬいぐるみ等に潜って産卵する。ただし、寝具や衣類、ぬいぐるみなどは低含水量であるため、潜っても多くの個体が死んでしまう。
予防としては、床材に畳やカーペットなどを使用するよりも、フローリングやタイルやクッションフロアシートなど、隙間となる凹凸がないまたは掃除がラクな凹凸をしている床材を積極的に使用することでダニの住処となる場所を減少させる。カーペットも部分的に敷くラグマットのほうが掃除やメンテナンスもラクで衛生的となる。

 

 

・・・ 次回は、 「汚れの分析と対策ポイント – その3」 について紹介する。