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連載:第4回 日経ホームビルダー「掃除がラクな家のつくり方」

建築業界初となる掃除専門家による連載! 雑誌「日経ホームビルダー」(2009年1月号・日経BP社)にて、クリーンプロデューサー「植木」による建築企画【掃除がラクな家のつくり方】を連載中です。第4回目は、「室内汚れを減らす設計のコツ…その2」を紹介しています。
これからの時代、家を建てた後から掃除を考えるのではなく、掃除メンテナンスを考えた家づくりを! ハウスクリーニングなど住居における掃除問題の解決手法を、掃除現場の声と共に家を建てる側の専門家に向けて情報発信をしていきます。掲載内容は、当HPの連載企画 「掃除がラクな家の構想案」の一部を抜粋したものとなっています。

「日経ホームビルダー」は、工務店、ハウスメーカーをはじめ設計事務所、建材・設備会社などで戸建て住宅の設計、施工に携わる方々に、住宅の性能、コスト、顧客ニーズへの対応など技術や営業、経営、市場に関する最新情報やノウハウを読みやすく、わかりやすく紹介する実務情報誌です。
詳しくは: http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/HB/ 

 

連載:第4回 「お掃除ニャンポイント講座」

雑誌「猫生活」(2009年1月号・緑書房)より、クリーンプロデューサー「植木」によるお掃除企画【お掃除ニャンポイント講座】を連載中!。第4回目は、年末大掃除のポイントについて紹介しています。その他にも、猫課★報告書(ブログ)担当「しずく」による【猫課4コマ劇場】にて、猫社員も毎回登場しています。また、ペットと快適に暮らしていくためのお掃除情報については、ベストHPのペットtoベストまで。

 

掃除の方程式と基礎知識を使った、汚れ除去の一例 /第1編 第2章 ー5 

 

  

 

 
● 2.5 掃除の方程式と基礎知識を使って除去方法を決定する

掃除の基礎知識を活用した汚れの除去例をつぎに紹介する。キッチン流し台のカウンター(天板)に、料理の際にはねた油が積み重なり、時間の経過とともに固く頑固な汚れとなってしまった。この汚れを除去するには・・・という設定で話を進める。

Ⅰ. 何所に?(建材の知識)
建材の、①種類と使用部位 ②耐水・耐洗剤性 ③表面形状や硬度および吸水・吸湿性を分析

Ⅱ. どんな汚れ?(汚れの知識)
汚れの、①付着原因 ②種類 ③付着状態 ④経時変化を分析

 

——————————————– 分析結果を基に ——————————————–

 
Ⅲ. 洗剤を使用するのか?(洗剤の知識)化学的な除去力
①洗剤の選定 ②洗剤の上手な使い方

Ⅳ. 用具を使用するのか?(用具の知識)物理的な除去力
①用具の選定 ②用具の応用

Ⅴ. どんな掃除方法?(作業方法の知識)除去力の活用法
①作業区分による作業内容の選定 ②掃除の基本的な作業手順

Ⅵ. 予防は?(保護剤の知識)

 

 Ⅰ. 何所に?(建材の知識)

建材の分析手順
①種類と使用部位 ②耐水・耐洗剤性 ③表面形状や硬度および吸水・吸湿性

汚れが付着している場所は、ステンレス製の台所流し台天板であり、素材のステンレスは耐水性で錆びにくく、比較的洗剤に対しても耐性があるので、掃除がラクな建材の部類に入る。表面の形状は凹凸が無い平滑で密なものであることがわかった。しかし、ステンレスはそれほど硬くないので、鉄や硬い鋭利な物でこすると容易に傷ついてしまう。
*凹凸のないステンレスを、人の目線よりも低い位置に天板として使用されている場合は、光の反射などによって細かい傷も目立ってしまうので、頑固な汚れ除去の際、”こする”または”削る”などの作業を行う場合には、傷がつかないよう注意が必要である。

 
   

 

 

Ⅱ. どんな汚れ?(汚れの知識)

汚れの分析手順
①付着原因 ②種類 ③付着状態 ④経時変化

除去対象となる汚れは、料理の際にはねた油やこぼした調味料などが原因で、少しベタつく水になじまない物質である事がわかった。この事から汚れの種類としては、食用油などを主成分とする油溶性物質ということがわかる。付着状態としては「固着している」状態で、汚れが付着してから相当の時間が経過しており、その際にも新たな汚れが積み重なり”かさ高固着物”となっている。

 
   

汚れを除去するには洗剤など化学的力を使って溶かしたり、かさ高の部分については”こすり取る”または”削り取る”などの物理的な力を用いることで、汚れの除去を容易に行うことができる。

 

 

Ⅲ. 洗剤を使用するのか?(洗剤の知識)

化学的な除去力について
①洗剤の選定 ②洗剤の上手な使い方

油溶性の汚れは水をはじくため、洗剤を使用することで除去作業が容易になる。住まいの場合、市販されているキッチンの油汚れに効く洗剤を選定する。一般的には弱アルカリ性の洗剤を使用するのだが、商品によっては添加剤として溶剤が入っている物もある。
洗剤を上手に使う一例として、 “温度が10℃上がれば汚れは2倍早く落ちる*1”ことを知っていると、洗剤を使用する前に、洗面器に40℃前後のお湯をためて、洗剤の容器ごと浸して温めてから使用すれば効果2倍!などの裏技的な応用が生まれてくる。

 
  *1 洗剤の知識→ 洗剤の上手な使い方→ 3.洗浄時の温度を参照
 

 

Ⅳ. 用具を使用するのか?(用具の知識)

掃除用具について
①用具の選定 ②用具の応用
・かさ高固着物となった汚れを削り取るための用具や、雑巾にバケツなど作業に必要な用具を選定する。

 
   

 

 
Ⅴ. どんな掃除方法?(作業方法の知識)

掃除作業について
①作業区分による作業内容の選定 ②掃除の基本的な作業手順
・作業区分別の適切な手段を、互いに矛盾しないように組み合わせて使用し、掃除の基本的な作業手順を考慮して、掃除方法を決定する。

1.
建材別作業法
建材の材質はステンレスを使用しており、部位が天板のため傷がつくと目立つ。頑固な汚れ除去の際、”こする”または”削る”などの作業を行う場合には傷がつかないよう注意が必要である
汚れ別作業法
汚れは水になじまない油溶性物質で、経時変化により硬い”かさ高固着物”となっている。汚れを除去するには洗剤など化学的力を使って溶かしたり、かさ高の部分については”こすり取る”または”削り取る”などの物理的な力を用いることで、汚れの除去を容易にする。
 
   

2.
洗剤の使用(化学的な除去力)
水になじまない汚れを除去するために、弱アルカリ性の洗剤を使用する。添加剤として溶剤が入っている物もある。洗剤を塗布してからしばらく放置する事で、洗剤成分が汚れ物質を分解する時間となる。このとき、洗剤自体を40℃前後に温めておくと、汚れが早く分解する。

   

3.
用具の使用(物理的な力)
洗剤により汚れの表面が溶け出したら、ケレン類などの用具を使い、汚れのかさ高の部分を削り取る。このとき汚れが付着しているステンレス建材は、硬い素材で作られた用具を使用すると傷がつきやすいので、プラスチック素材で作られた「ヘラ」や「カード」などのしなる力を物理的な除去力として使用するとよい。

   

4.
作業方法の知識(化学的な力+物理的な力)
汚れのかさ高の部分を、削り取ったあと少し残った汚れは、再度洗剤をつけて汚れを分解し、スポンジで軽く”こする”などして除去する。作業の際、ステンレス建材は傷が付きやすいので、目の粗いスポンジなど強い物理的な力には注意が必要である。

5.
作業方法の知識(すすぎ作業)
建材に洗剤が残らないように、水で濡らしよく絞った雑巾などで水拭きする。その後、乾いたキレイな雑巾で拭くことにより、水拭き作業で残った水の跡を消し、仕上げの磨きをかけるとよい。

   

 

 

Ⅵ. 予防は?(保護剤の知識)
汚れ予防として保護剤を塗布しておくと汚れにくく、汚れが付着しても除去しやすくなる。キッチンは水場でもあるので、耐水性または撥水性のある防汚コーティングなどを使用するとよい。

   

 

 
 
★ 住まいの掃除をラクにするための法則の考案
いくら掃除の基礎知識を身につけて作業効率を向上させたとしても、やはり掃除は大変である。しかし、家を新築およびリフォームする際に、構想段階から汚れや掃除の予防対策ができれば、住まいの掃除はもっとラクになる。そのためにも掃除の専門家として、長年様々な現場で掃除作業をしてきた経験と、掃除の基礎知識を基に、汚れにくく掃除がラクになる法則を考案したので、次回の第3章にて紹介する。

保護剤の知識(予防掃除) /第1編第2章ー4掃除方法の決定 その4 … 2.4-4 

 

 

  

 
● 2.4-4 保護剤の知識(予防掃除)

掃除後に保護剤を施工することで、汚れの再汚染防止や付着後の掃除をラクに行うことができる。保護剤の条件としては汚れがつきにくく、付着した汚染物質を容易に除去でき、併せて保護膜そのものが容易に再生できる物でなければならない。保護材の種類はとても多くその性能も多種多様であり、施工には専門的な知識と技術が必要とされるものが多いため、一般家庭で居住者による使用は比較的少ない。これらのことからも、一般的にはあまり知られていない保護剤であるが、ビル清掃などプロの現場で使用される床維持剤を例に紹介する。

 

(1) 床維持剤
保護剤の代表的なものは、床面に使用する床維持剤(ワックス)などあるが、施工によってはかえって汚れを抱き込んだり、保護膜の劣化を生じて見苦しくなるので、保護剤についても洗剤類と同様に十分な知識が必要である。
床維持剤を塗布すると連続した薄い皮膜ができる。この皮膜ができることで次の効果が得られる。
① 床の磨耗と損傷を防ぐ
② 床の美観を高める
③ 汚れの付着を防ぎ、付着した汚れの除去を容易にする
④ 床掃除の作業性を高める

1)床維持剤の分類

   

 

この他にも様々な製品が毎年新発売されており、塗布して乾燥させるものから、紫外線を当てることで硬化皮膜を形成するタイプのものまでと多種多様である。床維持剤の分類の中の、フロアポリッシュをさらに分類してみると次のようになる。
   

フローリングなどで使用される、市販の家庭用床維持剤(通称:ワックス)の代表的なものは、フロアポリッシュの水性でポリマータイプの樹脂ワックスが主流のようである。

2)床維持剤施工例

例)フローリングのワックス施工手順 (*掃除の専門業者によるフローリングのワックス施工例 写真は有限会社ベスト)

   

例)フローリングのワックス施工画像

   

 

古いワックスはうっすら黒っぽく、歩行などの磨耗によりワックスが剥げた所との色の違いで、床全体が汚れて見える。

水色のテープを境に、左側の床を掃除した後、ワックスを塗布した画像。テープ右側はワックス施工前の状態。

床全体のワックス施工

水色のテープを境に、上部の床を掃除した後、ワックスを塗布した画像。

床全体のワックス施工

 

 

 次回は、「掃除の方程式と基礎知識を使った、汚れ除去の一例」を紹介する。

作業方法の知識(除去力の活用法) /第1編 第4章 掃除方法の決定 その3

 

洗剤の知識・用具の知識をもとに除去力の選定 → どのように作業するのか? ← 予防掃除?

 

● 2.4-3作業方法の知識(除去力の活用法)

効率よく掃除を行うためには、作業内容や手順など、除去力(化学的な力と物理的な力)を効果的に活用するための、作業方法の知識が必要とされる。
作業方法を決めるには、「何所に、どのような汚れが付着しているのか?」を分析した結果を基に、「洗剤や用具」などの除去力の選定を行い、それを活用できるような作業内容を決定する必要がある。

例えば、「台所の頑固な油汚れに洗剤を使用する場合、汚れに洗剤をつけてしばらく放置する事で、洗剤成分が汚れを分解する時間となり、頑固な汚れも弱い物理力で除去することができ、結果的に掃除がラクになる。さらに、放置している時間を利用して次の作業の準備や、居間や浴室の掃除など他の作業を行う事ができ、時間を有効に活用できる。しかし、放置時間を誤ると建材に害を与える事もあるので十分な注意が必要である」など、除去力を選定し、作業区分や手順など適切な作業方法により、効率よく掃除を行う事ができる。さらに、掃除後の建材に防汚コーティングをする事で、汚れがつきにくく、付着した汚れをラクに除去できる。

 

★作業方法決定手順

①「作業区分により作業内容を決める」→ ② ①の作業内容に、「掃除の基本的な作業手順」を採り入れ、掃除の全体的な実施方法を組み立てる

 

(1) 作業区分により作業内容を決める
「何所に、どのような汚れが付着しているのか?」を分析した結果を基に、作業区分別の特徴や性質を考慮して、除去力(化学的な力と物理的な力)を効果的に活用するための作業内容を決定する。作業区分としては、建材別・汚れ別・部位別・場所別に分けることができる。例えば、建材別で掃除方法を決定するなら「タイルの掃除方法」となり、汚れ別で作業内容を決定するなら「油汚れの掃除方法」など、作業内容を決めるための基準として建材・汚れ・部位・場所別などに区分して考えるとまとめやすくなる。具体的な掃除方法としては、インターネットなどにより各作業区分の「○○の掃除方法」などで検索すると、様々なサイトで紹介しているので、目的に合った掃除方法を知ることもできる。

 
1)建材別で作業方法を決定する(木、鉄、プラスチック、etc)

   
 

2)汚れ別で作業方法を決定する(ほこり、油汚れ、カビ、etc)

   
 

3)部位別で作業方法を決定する(天井、壁、窓、床、etc)

   
 

4)場所別で作業方法を決定する(台所、居間、浴室、トイレ、玄関、etc)

   
*例)汚れが付着している建材はステンレス、汚れは油汚れ、部位は壁面(高所)、場所は台所の、汚れを除去する作業内容を考える。
傷がつきやすいステンレス建材の性質を考慮して、油汚れを除去するための洗剤や用具を選定し、壁面の高所に対応した作業内容(作業の安全性も含む)を決定する。

   

 

 

(2) 掃除の基本的な作業手順
(1)の作業内容に、掃除の基本的な作業手順を採り入れ、全体的な作業の流れと実施方法を組み立てることで、効率よく掃除を行うことができる。次に紹介する手順は、作業の基本的な目安であり、各住まいの作業環境や状況に応じて個別の対処する事が望ましい。

 

1)実施の手順 
建物を空間として区分した場合の掃除を行う作業手順としては、2階建て以上の家の場合上階から掃除を行う。ほこりや汚れは重力により下に落ちていくため、上階の掃除を先に行うことが望ましい。空間の大きさで考えた場合、広い所より狭い所での作業はしにくいため、先に作業を行う方が望ましい。進行方向で考えた場合、奥の方から入り口に向けて作業することで、作業後の再汚染を防ぐことになる。このようにそれぞれの理由から、効率よく掃除を行うための基本的な実施手順がある。

   
 

2)部位別の手順 
住まいを部位別に区分した場合の作業手順としては、上から下へ掃除をすることが基本となる。ほこりや汚れは下に落ちていくため、作業後の再汚染を防止するためにも上部から掃除を行う。はじめに天井部分の建材や電器類などの掃除を行い、つぎに壁部分となる建材や扉や窓サッシの掃除を行い、最後に床面部分として家具から床の掃除といった作業手順となる。

   
 

3)場所別の手順
住まいを場所別に区分した場合の作業手順としては、各場所の衛生性を考慮すると、食事を作る台所の掃除をはじめに行う。それは、食材などを扱う衛生性を求められる場所に、他の場所の汚れを持ち込まないためでもある。つぎに居室の掃除、浴室の掃除、トイレの掃除の順で行い、最後に玄関の掃除といった作業手順で行うことが望ましい。

   

 

*** 次回は予防掃除として、保護剤の知識について紹介したいと思う。

用具の知識 (物理的な力) /第1編 第4章 掃除方法の決定 その1 

 

  


● 2.4-2 用具の知識(物理的な力)

掃除方法を決定するための物理的な力として、掃除用具(各種器具や機械類)を使い、”掃く・拭く・はたく・吸う・磨く・擦る・削る・流す” などの物理力で汚れを除去する。物理力においても、洗剤同様に使い方を誤ると建材を傷つけるなど、害を及ぼすので注意が必要である。

★用具の基礎知識
(1)どんな用具があるのか?を知る(各種器具・機械類) → (2)用具の応用を知る

 
  
 

(1) どんな用具があるのか?を知る(各種器具・機械類)
住まいの掃除用具の種類はとても多く、目的に応じ調べて選出し、各商品の使用法に従って活用する事が望ましい。数多くある「物理的な力」の代表的な掃除作業の行為を記すので、汚れ除去をイメージするための基本資料として、用具選出の際に活用してもらいたい。

 

   

掃除用具の1例として、「ペットと暮らす・日頃のお手入れに便利な用具」 詳しくは → http://www.osouji-best.com/PetToPet/benriDougu.htm 

掃除用具の応用例として、水に圧力を加える事でただ流すだけでなく、別の効果を得る事ができる。ホースと散水用のアタッチメントを使い、水に圧力を加えてその散水形状を扇形にすることで、ほうきのように水で床を “掃く”ことや、高圧洗浄機を使いさらに水圧を高くして”擦る・削る”などの効果を得ることもできる。このように様々な用具を組み合わせる事で無数の物理的な除去方法が生まれる。
さらに、身の回りの日用品や掃除とは無関係に思われるものが、使い方と組み合わせにより優秀な掃除用具となることもある。

 

 

(2)用具の応用を知る (掃除用具としての応用)

 

   

 

 

 

次回は、作業方法の知識について紹介したいと思う。

洗剤の知識 (化学的な力) /第1編 第4章 掃除方法の決定 その2

 

 

■ 掃除方法の決定

何所にどんな汚れが付着しているかを理解したら、次に掃除方法を決定する。そのためには汚れを除去するための力として、化学的な力(洗剤の知識)と物理的な力(用具の知識)を効果的に活用(作業方法の知識)する必要がある。最後に、汚れが再度付着したときを考慮する場合は、予防掃除として建材に防汚コーティングなど(保護剤の知識)を施すとよい。

洗剤を使うのか?→ 用具を使うのか?→ どのように作業するのか? ←予防掃除は?

   
掃除方法を決定するための手順としては、洗剤の力や用具の力といった「除去力」の選定をはじめに行い、それを活用した掃除作業の方法を決定する。したがって、作業方法を決定する前に「洗剤の知識」や「用具の知識」といった除去力に関する基礎知識が必要とされる。その後、除去力を活用するための作業内容や作業手順といった、「作業方法の知識」も必要とされる。最後に掃除方法を決定する際、汚れ除去作業終了後の予防掃除の一つとして、防汚コーティングを施す場合には「保護剤の知識」が求められる。

 

 

● 2.4-1 洗剤の知識(化学的な力)

   
掃除で必要とされる化学的な力の代表は洗剤である。掃除を行う時に洗剤を使用する事はとても多く、汚れを除去するためにも洗剤は必要不可欠といっても過言ではない。また、 “こすり取る”または”削り取る”などの物理的な力を使わずに、洗剤を使うだけで汚れを除去できれば、建材を傷つけるリスクを軽減させる事ができるし、作業もラクになる。しかし、使い方を誤ると建材を損傷させたり、汚れやすくなったりする。そのため少なくとも、分析された汚れを除去する際、洗剤は必要なのか、どんな洗剤を使用するのかなど、洗剤の必要性や分類を知る事が求められる。さらに、洗剤を上手に使うためにも洗剤の知識が必要とされる。

★洗剤の基礎知識
(1)どんな洗剤があるのか洗剤の分類を知る → (2)洗剤の上手な使い方を知る

 
 

(1) 洗剤の分類
住まいで使用する一般的な洗剤選びのポイントとしては、掃除をする場所や汚れに対してそれぞれに対応した洗剤が販売されているので、目的にあった製品を選ぶと良い。また、製品の示すpH値の違いによって、中性洗剤・アルカリ性洗剤・酸性洗剤や、添加剤などによって溶剤入り洗剤、研磨剤入り洗剤、酵素入り洗剤などに分類することもできる。

 

  * 一般的に洗剤というと合成洗剤のことをいう。しかし、近年話題となっている重曹や酢などを使用するナチュラルクリーニングなどは、洗剤ではないが化学的な力を上手に使っている掃除方法である。

家庭用洗剤などの家庭用品には「家庭用品品質表示法に基づく表示」により、「品名」・「成分」・「液性」・「用途」・「正味量」・「使用量の目安」・「使用上の注意」・「特別注意事項」などの表示が定められている。ちなみに、家庭用の合成洗剤にはつぎに記すような表示が義務付けられている。

 経済産業省より http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/hinpyo/i_zakka/zakka_rei.htm 
(4ー1)合成洗剤

ア)対象となるものは、主な洗浄作用が純石けん分以外の界面活性剤の働きによるもので、研磨材を含むもの及び化粧品は除きます。

イ)「品名」は、「洗濯用合成洗剤」「台所用合成洗剤」「その他用途を適切に表現した用語に合成洗剤の用語を付したもの」のいずれかを表示します。

ウ)「成分」は、「界面活性剤」の含有率が規程により定められた以上のものについて、系別及び種類を指定された用語により表示します。また、りん酸塩など洗浄補助剤が規程により定められた含有率以上含まれているものについては、その機能を示す名称の次に括弧書きで種類を表示する必要があります。これらのほか、蛍光剤、酵素、漂白剤を配合している場合は、それぞれ「蛍光増白剤」「酵素」「漂白剤」の用語を付記することとなっています。

エ)「液性」は、規程に定められた水素イオン濃度(pH)の区分に従い「アルカリ性」「弱アルカリ性」「中性」「弱酸性」「酸性」のいずれかを表示します。

オ)「用途」は、その用途を適切に表現した用語(野菜・果物用、食器用など)を用いて表示します。

カ)「正味量」は、計量法に規定する表示をします。単位は「キログラム」「グラム」「リットル」「ミリリットル」のいずれかで表示します。

キ)「使用量の目安」は、使用の適量について具体的(洗濯容量、水量との関係)にわかりやすく表示します。

ク)「使用上の注意」は、製品の品質に応じて必要な事項を適切に表示します。

ケ)「特別注意事項」は、文字の大きさや色、枠を設けるなど規程に従い、容器ごとに目立つ箇所に表示する必要があります。


(2) 洗剤の上手な使い方
洗剤を上手に使う7つのポイントをつぎに記す。 (ベストHPおそうじ教室洗剤マスター ・参照)

1. 取扱説明書は必ず読む
使用する洗剤については、必ず使用上の注意や使用方法などの説明書きを読み、それに伴った使用をする。

2. 洗剤の使用濃度
洗剤には最適の使用濃度があり、”家庭用品品質表示法”およびその他の法規でこれを表示することが定められている。ほとんどの市販されている家庭用洗剤はそのまま使用できるが、業務用や原液を薄めて使用するタイプのものなどは、適切な希釈倍率で薄めることが大切となる。濃さを2倍にしたからといって、効き目が2倍になるとは限らない。

3. 洗浄時の温度
洗剤の主成分でもある界面活性剤の水に溶けるスピードは、温度の上昇とともに速くなる傾向がある。一般に温度が20℃(クラフト点*1)を超えると、界面活性剤がほとんど水に溶けるといわれている。一例として、温度が10℃上がれば汚れは2倍早く落ちると考えられているが、普通40度前後のぬるま湯を使用すると良い。
*1.クラフト点とは、界面活性剤がある温度以上にあるとき、急によく溶ける境目の温度のことを言う

4. 適切な用具を使う
汚れを早く落とすには、汚れのある場所や素材に合った用具を使い、洗剤の作用が早く汚れにいきわたるようにする。スポンジやブラシ、その場所や素材(建材)にあった用具を選び活用することで、”早く・簡単”に汚れを落とすことができる。

5. パッチテスト(patch test *2)
洗剤や用具を使用する前には、必ず目立たないところで試してから作業を進める。それは、洗剤の効き方や用具の使い心地、汚れの落ち方などを確かめるためである。さらに汚れの付いている建材が、作業によって傷んでないかなどもチェックする。
*2。パッチテスト(patch test):一般的にはパッチテストというと、アレルギー性疾患の原因物質を調べるための検査をいう。しかしこの場合、直訳で”(作業場所の)一区画でテストする”という意味で、掃除で言うパッチテストとは、作業を始める前に目立たない所でテストをするという意味がある。

6. 注意!洗剤の混用 …まぜるな危険!
洗剤を使用するときは、むやみに他の洗剤と混ぜてはならない。例えば、酸性洗剤と塩素系漂白剤を混ぜると有毒ガス(塩素ガス:c l 2 ) が発生して人体にとても危険である。また酸性洗剤とアルカリ洗剤を混ぜると、それぞれの持つ特性が失われるので洗浄効果がなくなることもある。さらに、建材を傷める場合もあるので、むやみに洗剤を他の洗剤と混ぜるのはリスクが大きいということになる。

7. 洗剤使用後のすすぎ作業 …最後が大切!
作業の最後は水洗いまたは水拭きを丁寧におこなう。洗剤を使用後、建材に洗剤成分が残っていると汚れが付きやすくなったり、カビや微生物の発生原因ともなり衛生的にも良くない。さらに、長時間洗剤が素材に付着していると、化学変化などにより素材を損傷する原因にもなるため、洗剤を使用したあとはすすぎ作業を忘れてはならない。
 

 「洗剤の力」活用例

   

次回は、用具の知識について紹介したいと思う。