掃除の方程式と基礎知識を使った、汚れ除去の一例 /第1編 第2章 ー5
● 2.5 掃除の方程式と基礎知識を使って除去方法を決定する
掃除の基礎知識を活用した汚れの除去例をつぎに紹介する。キッチン流し台のカウンター(天板)に、料理の際にはねた油が積み重なり、時間の経過とともに固く頑固な汚れとなってしまった。この汚れを除去するには・・・という設定で話を進める。
Ⅰ. 何所に?(建材の知識)
建材の、①種類と使用部位 ②耐水・耐洗剤性 ③表面形状や硬度および吸水・吸湿性を分析
Ⅱ. どんな汚れ?(汚れの知識)
汚れの、①付着原因 ②種類 ③付着状態 ④経時変化を分析
-------------------------------------------- 分析結果を基に --------------------------------------------
Ⅲ. 洗剤を使用するのか?(洗剤の知識)化学的な除去力
①洗剤の選定 ②洗剤の上手な使い方
Ⅳ. 用具を使用するのか?(用具の知識)物理的な除去力
①用具の選定 ②用具の応用
Ⅴ. どんな掃除方法?(作業方法の知識)除去力の活用法
①作業区分による作業内容の選定 ②掃除の基本的な作業手順
Ⅵ. 予防は?(保護剤の知識)
Ⅰ. 何所に?(建材の知識)
建材の分析手順
①種類と使用部位 ②耐水・耐洗剤性 ③表面形状や硬度および吸水・吸湿性
汚れが付着している場所は、ステンレス製の台所流し台天板であり、素材のステンレスは耐水性で錆びにくく、比較的洗剤に対しても耐性があるので、掃除がラクな建材の部類に入る。表面の形状は凹凸が無い平滑で密なものであることがわかった。しかし、ステンレスはそれほど硬くないので、鉄や硬い鋭利な物でこすると容易に傷ついてしまう。
*凹凸のないステンレスを、人の目線よりも低い位置に天板として使用されている場合は、光の反射などによって細かい傷も目立ってしまうので、頑固な汚れ除去の際、"こする"または"削る"などの作業を行う場合には、傷がつかないよう注意が必要である。
Ⅱ. どんな汚れ?(汚れの知識)
汚れの分析手順
①付着原因 ②種類 ③付着状態 ④経時変化
除去対象となる汚れは、料理の際にはねた油やこぼした調味料などが原因で、少しベタつく水になじまない物質である事がわかった。この事から汚れの種類としては、食用油などを主成分とする油溶性物質ということがわかる。付着状態としては「固着している」状態で、汚れが付着してから相当の時間が経過しており、その際にも新たな汚れが積み重なり"かさ高固着物"となっている。
汚れを除去するには洗剤など化学的力を使って溶かしたり、かさ高の部分については"こすり取る"または"削り取る"などの物理的な力を用いることで、汚れの除去を容易に行うことができる。
Ⅲ. 洗剤を使用するのか?(洗剤の知識)
化学的な除去力について
①洗剤の選定 ②洗剤の上手な使い方
油溶性の汚れは水をはじくため、洗剤を使用することで除去作業が容易になる。住まいの場合、市販されているキッチンの油汚れに効く洗剤を選定する。一般的には弱アルカリ性の洗剤を使用するのだが、商品によっては添加剤として溶剤が入っている物もある。
洗剤を上手に使う一例として、 "温度が10℃上がれば汚れは2倍早く落ちる*1"ことを知っていると、洗剤を使用する前に、洗面器に40℃前後のお湯をためて、洗剤の容器ごと浸して温めてから使用すれば効果2倍!などの裏技的な応用が生まれてくる。
*1 洗剤の知識→ 洗剤の上手な使い方→ 3.洗浄時の温度を参照
Ⅳ. 用具を使用するのか?(用具の知識)
掃除用具について
①用具の選定 ②用具の応用
・かさ高固着物となった汚れを削り取るための用具や、雑巾にバケツなど作業に必要な用具を選定する。
Ⅴ. どんな掃除方法?(作業方法の知識)
掃除作業について
①作業区分による作業内容の選定 ②掃除の基本的な作業手順
・作業区分別の適切な手段を、互いに矛盾しないように組み合わせて使用し、掃除の基本的な作業手順を考慮して、掃除方法を決定する。
1.
建材別作業法
建材の材質はステンレスを使用しており、部位が天板のため傷がつくと目立つ。頑固な汚れ除去の際、"こする"または"削る"などの作業を行う場合には傷がつかないよう注意が必要である
汚れ別作業法
汚れは水になじまない油溶性物質で、経時変化により硬い"かさ高固着物"となっている。汚れを除去するには洗剤など化学的力を使って溶かしたり、かさ高の部分については"こすり取る"または"削り取る"などの物理的な力を用いることで、汚れの除去を容易にする。
2.
洗剤の使用(化学的な除去力)
水になじまない汚れを除去するために、弱アルカリ性の洗剤を使用する。添加剤として溶剤が入っている物もある。洗剤を塗布してからしばらく放置する事で、洗剤成分が汚れ物質を分解する時間となる。このとき、洗剤自体を40℃前後に温めておくと、汚れが早く分解する。
3.
用具の使用(物理的な力)
洗剤により汚れの表面が溶け出したら、ケレン類などの用具を使い、汚れのかさ高の部分を削り取る。このとき汚れが付着しているステンレス建材は、硬い素材で作られた用具を使用すると傷がつきやすいので、プラスチック素材で作られた「ヘラ」や「カード」などのしなる力を物理的な除去力として使用するとよい。
4.
作業方法の知識(化学的な力+物理的な力)
汚れのかさ高の部分を、削り取ったあと少し残った汚れは、再度洗剤をつけて汚れを分解し、スポンジで軽く"こする"などして除去する。作業の際、ステンレス建材は傷が付きやすいので、目の粗いスポンジなど強い物理的な力には注意が必要である。
5.
作業方法の知識(すすぎ作業)
建材に洗剤が残らないように、水で濡らしよく絞った雑巾などで水拭きする。その後、乾いたキレイな雑巾で拭くことにより、水拭き作業で残った水の跡を消し、仕上げの磨きをかけるとよい。
Ⅵ. 予防は?(保護剤の知識)
汚れ予防として保護剤を塗布しておくと汚れにくく、汚れが付着しても除去しやすくなる。キッチンは水場でもあるので、耐水性または撥水性のある防汚コーティングなどを使用するとよい。
★ 住まいの掃除をラクにするための法則の考案
いくら掃除の基礎知識を身につけて作業効率を向上させたとしても、やはり掃除は大変である。しかし、家を新築およびリフォームする際に、構想段階から汚れや掃除の予防対策ができれば、住まいの掃除はもっとラクになる。そのためにも掃除の専門家として、長年様々な現場で掃除作業をしてきた経験と、掃除の基礎知識を基に、汚れにくく掃除がラクになる法則を考案したので、次回の第3章にて紹介する。