掃除がラクな床材(フローリング、カーペット、クッションフロア、タイル・石材、畳、他)/第三章 -2.2
3-2.2 掃除がラクな床材(フローリング、カーペット、クッションフロア、タイル・石材、畳、他)
住まいの中でも一番汚れやすい場所が床面である。そして、床に使用される建材の種類によって汚れの付着する状態が異なるため、掃除作業に大きな影響を与えることになる。
住まいで使用される代表的な各床材と汚れの状態を拡大して見ると、フローリングは上にのっているという感じで掃除はラクであるが、カーペットは絡みつき、畳は入り込むといった状態になりフローリングと比べて汚れを除去するのが困難となる。もちろん、各建材の素材の違いや商品によっても掃除のラクなものは多く存在する。室内で一番汚れが付着する部分は床である。液体や固体など日常生活に伴う様々な汚れの対策として、数多くある床材の中から、表面形状や商品性能を考慮して適材適所で選択していくことで、床の掃除をラクにする。
代表的な床材の掃除のポイントを、汚れなどを例に交えて紹介すると次のようになる。
これらの、数多くある床材を掃除がラクな順番で種類別に分けてみた。下記に示すのは、各建材の一般的な特徴により分けたものであり、各商品の機能は各メーカーでそれぞれ異なる。
(1) クッションフロア(CF)・Pタイル(P=プラスチック)
CFは、合成樹脂系の素材で出来たシート状の床材で耐水性に優れておりつなぎ目も少なく、キッチンや洗面脱衣場やトイレなど水回りに使用されることが多い。とくに、凹凸が無いまたは掃除がラクな凹凸のCFは、床材の中でも1番クリーニングのしやすい素材と言える。また、Pタイルはプラスチック系の素材で作られており、CFに比べて硬く質感に違いがある。CFもPタイルも掃除がラクな床材ではあるが、木や大理石などに比べると安っぽく感じる(質感)といった問題点がある。しかし、商品によっては模様がフローリングや大理石と間違うほどの精巧な物もある。
ハウスクリーニング現場エピソードと資料画像1.CF床材:洗面脱衣所
上の画像は洗面脱衣所の洗濯機置き場である。引っ越し後に洗濯機をどかしてみると、液体汚れやほこりなど複数の汚れが混ざり合い、乾燥して固着してしまった状態。CF素材は耐水性や耐洗剤性があるため、上の汚れはほぼ除去できる。しかし、長期間汚れが放置されると素材の劣化に伴うしみ汚れが出来ることがあり、この場合汚れが付着しているわけではなく変色してしまう状態となり、汚れに強いCF素材とはいえ除去することが難しくなる。
つまり、建材に付着している汚れは除去できるが、経年による劣化や変色した汚れは除去できないと考えても良いということである。そのためにも日常的な掃除が重要であるといえる。
(2) フローリング
近年の住宅で1番人気のある床材と思われるフローリングは、木のぬくもりがあり、むく材になると湿度調節の作用もあるとされている。複合フローリングでは、防音タイプや抗菌塗装を施したものなど様々な機能を持ち合わせているものもがある。
フローリングはカーペットや畳に比べて凹凸が少なく掃除は比較的ラクである。しかし基本的には水に弱いため、表面を樹脂コーティングすることで、若干の耐水性を持つ事が出来る。その他、フローリングの目地(凹部)に入った汚れは取りづらい事もあるので、目地の無いフローリングを使うほうが掃除はラクである。
★フローリングの中でも掃除がラクなものとして、WPC*または単板のフローリングで目地のないタイプにコーティングをしたもの(手入れが容易で安価)がお勧めである。また、フローリングはカーペットと比べて、ハウスダストやダニなどの発生率が低減されると言われており、掃除もラクであるため吸入性アレルギーの予防対策ともなる。
ハウスクリーニング現場エピソードと資料画像2.フローリング床材:居室や廊下
経年使用の中で、人がよく歩く場所とそうでない場所とでは床表面の保護剤(床維持剤など)の消耗に差が出る。また、保護剤自体も経年の中で汚れていくので、定期的なメンテナンスが必要とされる。
(上)写真左下の明るく見える部分は、経年歩行により床維持剤(ワックス)が消耗してしまい、右側の暗く見える部分はワックスがまだある状態。これも居住者にとっては床の汚れとされる。
(3) タイル・石
水まわりの内装材として一般的なタイルは、耐候性、防火性、防水性に優れた仕上げ材である。また、酸やアルカリなど薬品にも比較的強く、耐摩耗性もあり、掃除もラクな素材といえる。しかしタイルの目地は素材が違い、汚れが素材に入り込むと除去が大変である。最近では、キッチンやバスルームや玄関だけでなく、リビングなどでもタイル床が使われているのを見かけることもある。石材の床では天然石よりも人工大理石の方が耐水性や耐洗剤性などに優れていることが多い。また、石材表面が磨き仕上げなど凹凸の無い物は掃除がラクである。
ハウスクリーニング現場エピソードと資料画像3.タイル床材:玄関やバルコニーなど
(上)玄関の磁器タイルの上に簡易タイルを載せている。長期間放置された簡易タイル下の汚れはひどく、経年により磁器タイルにしみ込んだ汚れ除去が困難となる。
(4) 畳(タタミ)
日本に古くから伝わる床材で和室には欠かせない畳。天然素材100%の畳は湿気をコントロールしたり、有害な物質を吸ったりと呼吸をしているので「天然の空気清浄機」などとも呼ばれる。しかし現代では人工畳が主流であり、とくに気密化住宅での使用は表面のい草などにダニやカビが発生しやすく、汚れも畳同士の継ぎ目や素材に入り込むため、掃除は比較的大変な床材である。また、素材に吸水性があるため、液体汚れなどがしみ込むと除去に困難を伴う。畳にも多くの種類や商品があり、少しでも掃除について対策されている商品を選ぶか、その他で掃除がラクになる対策をすることが、居住後の掃除をラクにすることとなる。
*ハウスクリーニングなどの現場では、梅雨時期に賃貸マンションの借り手が見つからず、数カ月窓を締め切った状態で放置していたら畳表面にカビが大発生し、それに伴いダニも大量発生したため駆除や防カビを含むクリーニングの依頼を受けた事実もある。これらは単に建材だけの問題ではなく、室内の設計や構造や管理方法など様々な要因が関係していると思われる。
ハウスクリーニング現場エピソードと資料画像4.たたみ床材:和室など
和室には欠かせない床材となる畳は、近くで見ると凹凸が多くある。
(5) カーペット
基本的にカーペットは素材表面の凹凸が激しく吸水性があるため、CFやフローリングに比べて掃除が大変といえる。しかし、カーペット自体には優れた特徴や居住者からの要望も多くあるため、使用する機会は多いと思われる。その場合、様々なメーカーにより販売されているカーペットの商品機能として防汚性能があるなど、少しでも掃除のラクな商品を使用する他、タイルカーペットなどは部分的な取替えが出来るのでメンテナンス性は高い。さらに、床全体をカーペットにするよりは、ラグマットなどを部分的に使用するほうが掃除はラクである(ラグマットが汚れても、浴室などで洗うことが出来、日影干しも可能となるからである)。
また、カーペットの中でもウールやシルクなど天然素材のものは価格も高く、掃除作業で傷めてしまうこともあるデリケートな素材であるため、他のカーペットよりも掃除は大変で、クリーニングの料金も高くなるので注意が必要である。しかし、高級感があり保温性が高く調湿効果もあるなど、優れた床材であるのは間違いない。
ハウスクリーニング現場エピソードと資料画像5.カーペット
(上)敷き込みのカーペットの下にはクッションとなる下地があり、液体汚れなどは表面をきれいにしても下地にたまり、さらにその下の合板にまで影響を及ぼすこともある。ペットのオシッコなどはいつまでも臭いが残り、最悪の結果を招くことにもなる。
次回は、第三章 -2.3 掃除がラクな壁面・天井材(窓サッシ、壁紙、珪藻土、木、タイル、扉、他)を紹介する。